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こんな状況なので読書家でもないのに書籍をおすすめしてみようの巻

2020/04/17

雑記・備忘録

外出自粛要請中だし家であれこれシリーズ。
今回は個人的に好きな本についての話。

インドアでの娯楽の代表格といえば、やはり読書でしょう。時代を問わず国を問わず、人々が時間を忘れて没頭してきた、人類にのみ与えられた娯楽。家で過ごす時間が長いとなれば、読書しない手はないわけです。トランプだ野球盤だ言ってる場合ではないのです。

というわけで今回は、読者家である自分がこれまでに読んできた数々の書籍の中から、これはぜひという作品を厳選してご紹介…

嘘をつきました。わたくし、読書をいたしません。

分類するとすれば間違いなくインドア派になるのですが、驚くほど本を読む習慣がありません。これまでに読了した冊数は都道府県程度。ただ本当にドアの中にインしてる人です。

なろうとはしたんです。ならないといけないと思ったんです。スポーツができず音楽も聴かず芸術に興じるセンスもない。ならばもう趣味は読書しかないだろうと。試しに買いましたよ小説とか。俺は読書家と思いこもうと、自分を騙そうと努力しました。

これ以上騙しきれないと気付いたのは社会人の頃。出版社で勤め始めていたものの、どうにも周りとの仕事の熱量に追いつけない。頑張り切れない。能力だけならいざ知らず、何故周りほどの熱量を出せないのか。自分を改めて顧みてみました。

そこで気付いたのです。
「あ、そもそも俺本あんまり好きじゃないからだ」。

根本から向いてなかったのです。自分に嘘をついてきていたのです。俺は本が好きなのだと。そうやって、社会人になってしまったのです。

もう嘘はつきません。
俺本読まないです!読書家じゃないです!

何を強調して宣言してるのでしょうか。

なれませんでしたねー。読書家。なりたかったなあ。ああ、自分の時間を読書に充てる人間になりたかった。書斎とか持ちたかった。「今日は読みかけの本があるから」と友人の誘いを断ってみたかった。ソファでコーヒー片手にクラシックでも流しながらぼんやりと本の世界に浸る午後とか過ごしてみたかった。

そんな人間です。
なので、読書家が今回の記事に期待などせぬように。
ここまで書いておいて薦めようとする勇気を褒める優しさを持つように。


前振りが長くなりました。そんな自分が意を決してお勧めするのが


奥田英朗「野球の国」(光文社)。


芸能人の自伝とか取り上げなかっただけでも褒めて欲しいくらいです。


この本との出会いは本当に偶然で、忘れもしない一人暮らし時代、最寄り駅の小さな書店で棚にあった一冊をなんとなく手に取りました。理由はもちろんそのタイトル。本の存在も、著者の名前も知りませんでした。直木賞作家だと知ったのは随分後。「直木賞作家の作品を自分の感性で選んだ」という格好になったことで、なんか読書好きっぽいとニヤニヤしたのを覚えています。

ジャンルとしては紀行エッセイです。帯にそう書いてあるので合ってると思います。

ふとした思い付きで中日ドラゴンズのキャンプ見学に旅立つ「沖縄編」からスタートし、そこで野球を絡めた一人旅の面白さに目覚め、野球目当てに各地をまわることに。各地での道中のできごとを、沖縄編を含めた全六編で綴っています。


この本の魅力はいくつもあるのですが、まず何より著者が本当に野球好きなのが伝わってくるのがいいです。旅の目的が完全に野球のみという行程は、遠征好きの方々の共感を呼ぶと思います。

旅先も多岐にわたっています。坊っちゃんスタジアムに向かうため四国へ、日本プロ野球公式戦初開催を見届けに台湾へ、二軍戦のために東北へ(カードが読売対シーレックスっていうのがまたいい)、しまなみ球場の杮落としで広島へ、〆はマスターズリーグのために九州へ。

特に台湾編は今のところ唯一の日本プロ野球公式戦開催の試合ということもあり、その時の現地の様子を知る貴重な史料ともいえます。

懐かしいなあ。カードはダイエー対オリックスで、テレビで観てました。ダイエーがこの試合の後はライオンズ戦という日程だったんですが、場所が長野という。30度近い台湾から冷え冷えの長野への強行軍を強いられたダイエーが、この連戦後からみるみる優勝戦線から脱落していったので、そこまで込みで印象に残っています。

ちなみにこのエッセイは1年間のできごとを綴っているので、すべてこの試合があった2002年の話になっています。そのため当時現役として出てくる選手名も懐かしく、その後の名選手が期待の若手として書かれていたりして、それだけでも楽しいです。


野球場の出来事だけではなく、移動開始から食事、宿での時間に至るまで語られているのもいいです。広島編に至っては出発前日から始まっています。遠征を疑似体験しているような気分に入り込めて、毎度遠征する一週間前くらいになると読み返したくなります。


あとはこれは誉め言葉になっているか不安ですが、著者が良い感じにダメ人間なところも魅力。小説家になれてる時点で凡人でないのは明らかですが、ひねくれ具合というか、ちょっとマイナス思考な感じが個人的には小気味良い。道中も選択ミスでぐだぐだになってテンションを下げたり愚痴り始めたりするのが、人間味があって好きです。


一方で経済レベルは高いので、高級ホテルやレストランを使っているのですが、そこでの描写が羨ましく、でも奮発すれば自分にも非現実的ではないちょうど良いランクの内容であることが、なんというか旅行ガイド的な面白味も生んでます。「あー、こういう遠征もしてみたいな」と掻き立てられる感じ。


全体を通して感じるのは、文章のうまさ。

当たり前だ。と思われるでしょうが、本当に読みやすいです。

好みはあるでしょうが、言葉の操り方というかリズムが自分にはすごく合ってました。この後小説作品も読んだのですが、読書が苦手なはずが長編でも苦も無く読み進められました。多分この方の文章が好きなんだと思います。

そんなうまい文章で野球や球場の魅力を語っているので、ものすごく共感できます。また、自分の中でうまく説明できない感情をその文章力で表現してくれていて、そうか、だから自分は野球が好きなのか、と再認識することもできました。


ほかにもお伝えしたい魅力は山ほどあるのですが、こんな拙い文章読んでるより少しでも早く作品自体に触れてもらうべきと気づいたのでここまでにします。電子書籍でも発行されています。

kindle版Reader版Booklive版

特にこのブログを読むようなそこそこ捻くれた野球好きの方々にはきっと響くと思います。我ながら珍しく自信をもってお勧めします。


外に出れない日々が続きますが、ぜひこの本で自宅で遠征気分に浸ってみてください。



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